ロシアAPT「Laundry Bear」がZimbraのゼロクリック脆弱性を悪用してメールを窃取 - CISA警告
CISAはロシア国家支援グループ「Laundry Bear(Void Blizzard)」がZimbra Collaborationの既修正脆弱性とフィッシングを組み合わせてメール窃取攻撃を展開していると警告。Zimbra利用組織は早急な確認が必要だ。
喜村 圭佑(編集責任者)更新 約6分

THREAT GAUGE3つの指標でこのインシデントの脅威度を評価しています。IMPACT(影響範囲)は被害の大きさ、URGENCY(対応緊急度)は対応までに残された時間の短さ、EXPLOIT(悪用の容易さ)は攻撃者が実際に悪用できる容易さを表します。算出基準
“国家支援APTによる積極的悪用。ゼロクリックでメール窃取可能”
01 · Overview
ニュースの概要
2026年7月23日、CISA(米国サイバーセキュリティインフラセキュリティ庁)はロシア国家支援の脅威グループ「Laundry Bear」(別名:Void Blizzard)が、Zimbra Collaboration(メールサーバーソフトウェア)のゼロクリック脆弱性を悪用して組織のメールを窃取する攻撃を継続していると警告した。
Laundry BearはフィッシングメールとZimbra脆弱性の組み合わせで攻撃を展開しているとされる。「ゼロクリック」とは、受信者がメールを開いたり添付ファイルをクリックしたりすることなく、メールを受信するだけで攻撃が成立する手法を指し、従来のフィッシング対策(添付ファイルを開かない等)では防御できないため特に危険だ。
Zimbra Collaborationはオープンソース系のメールコラボレーションプラットフォームであり、行政機関・教育機関・中小企業・国際NGOなど、Microsoftメール製品以外を使用する組織で広く採用されている。日本国内でも一部の行政機関や大学でZimbraが稼働している。
BleepingComputerの報道によると、今回悪用されているZimbra脆弱性はすでにパッチが提供されているが、未適用の環境が多数残存しているとみられる。CISAは特に政府機関・重要インフラ向けにZimbraの即時アップデートと侵害調査を強く推奨している。
- 攻撃グループ
- Laundry Bear / Void Blizzard
- 帰属
- ロシア国家支援(FSB関連とされる)
- 攻撃対象ソフト
- Zimbra Collaboration(メールサーバー)
- 手法
- ゼロクリックフィッシング+脆弱性悪用
- CISA警告発行日
- 2026年7月23日
- パッチ状況
- 既修正(未適用環境に悪用継続)
BleepingComputerおよびCISAの公式発表に基づく要約。攻撃の技術的詳細はCISAアドバイザリの原文を参照のこと。
02 · Analysis
詳細な原因解説
Zimbraの今回の脆弱性の技術的詳細はCISAのアドバイザリに記載されているが、メール処理パイプラインの特定コンポーネントにおける入力検証不備が根本原因と考えられる。ゼロクリック攻撃が成立するということは、メールのヘッダーや本文を受信サーバーが解析する過程でコードが実行される可能性を示唆している。
Laundry BearはNATO加盟国・欧州政府機関・外交機関を主要ターゲットとしてきた実績を持つグループだ。今回の攻撃もロシアの地政学的利益に沿った情報収集(インテリジェンス活動)の一環とみられる。ゼロクリック脆弱性はAPT(国家支援の高度標的型攻撃)グループが好む手法であり、ターゲットに気づかれずに長期間メールを傍受できる。
フィッシングとゼロクリック脆弱性の組み合わせが特に厄介な点は、フィッシングが偵察フェーズとして機能し(メールアドレスの有効性確認、標的の特定など)、脆弱性悪用が本攻撃フェーズとして機能するという二段階構造にある。
また、パッチが既に提供されているにもかかわらず悪用が継続しているという事実は、組織のパッチ管理サイクルに依然として大きなギャップがあることを示している。特にZimbraはオープンソース系のため商用サポートなしで自己管理している組織が多く、脆弱性対応の遅延が生じやすい。
03 · Action
今からできる主な対策
明日からすぐ
1週間以内
05 · Forecast
今後起こりうる展開と対策複数の思考フレームワークを用いて、今後起こりうる展開と有効な対策を整理したセクションです。
Kill Chain:Laundry BearのZimbra攻撃チェーンを分解
Q. Laundry BearはどのKill Chainステージでどのツール・手法を使用しているか?
【Reconnaissance(偵察)】標的組織のメールアドレスリストをOSINTで収集し、Zimbraを使用しているかどうかをサービスバナー取得で確認する。【Weaponization(武器化)】Zimbra脆弱性を悪用するゼロクリックペイロードを準備し、フィッシングメールとして配信可能な形に加工する。【Delivery(配信)】標的にメールを送信し、受信サーバーでのメール処理時に脆弱性を自動発火させる。【Exploitation(悪用)】ゼロクリックでZimbraサーバー上のコード実行権限を取得する。【Installation(インストール)】バックドアやウェブシェルを設置して永続化する。【Command&Control(C2)】Zimbraサーバーを踏み台にC2チャネルを確立し、標的組織内の他システムへのラテラルムーブメントを開始する。【Actions on Objectives(目的達成)】メールボックスへの長期アクセスにより外交・政治情報を継続的に窃取する。
システム思考:メール傍受が情報エコシステムに与える連鎖影響
Q. メールサーバーへの長期潜伏が引き起こすフィードバックループとは?
ゼロクリックでメールサーバーへ侵入した攻撃者は、気づかれないまま数ヶ月〜数年にわたってメールを傍受できる。この「見えない傍受者」が存在する状態では、組織内のすべてのメールコミュニケーションが漏洩していると想定しなければならない。交渉戦略・人事情報・M&Aプランなど競争優位の根幹をなす情報が敵対国家の手に渡り、外交交渉や商取引において不利な立場に立たされる「情報非対称性」が生じる。発覚が遅れるほどこのループは深まり、発覚後も「いつから・何が漏れたか」の特定が困難になるため、インシデント対応コストが指数関数的に増大する。
Zimbra環境への多層防御とAPTへの備え
APTグループへの対策は「侵入を完全に防ぐ」ことより「侵入を素早く検知して被害を最小化する」ことが現実的です。Zimbraのログを集中型SIEMに転送し、異常なメールエクスポートやアカウントアクセスパターンをリアルタイムで検知できる体制を整えることが最重要です。
外交機関・政府機関・防衛関連企業など国家支援グループの主要ターゲットとなり得る組織は、Microsoft Defender for Office 365やGoogle WorkspaceなどのクラウドネイティブなメールSaaSへの移行を中長期的に検討することも、セキュリティ態勢の根本改善策になり得ます。
06 · AI Prompt
AI対策プロンプトこのニュースを踏まえて自組織の対策を検討する際に、そのままAIアシスタントへ入力できるプロンプトのテンプレートです。
あなたは[組織種別]のセキュリティ担当者です。自組織ではオンプレミスのZimbra Collaborationを[バージョン]で運用しています。CISAの警告を受け、Laundry Bearによる侵害を受けていないか調査する必要があります。 以下を実施してください: 1. Zimbra管理者としてシェル操作で確認すべきログファイルのパスと、確認すべき不審なパターンの具体的なgrepコマンド例を5つ提示する 2. ネットワーク機器のログから確認すべきLaundry BearのC2通信特徴を説明する 3. 調査結果を「侵害なし」「要精査」「侵害の疑いあり」の3段階でトリアージする判断基準を示す 4. 「侵害の疑いあり」の場合に最初の2時間で実施すべきアクションを時系列で列挙する
キーワード
- Laundry Bear
- Zimbra
- ゼロクリック攻撃
- APT
- メールサーバー脆弱性
SOURCES · 参考情報源
- Russian hackers exploit Zimbra zero-click flaw for email theft ↗— BleepingComputer(2026-07-23)



